小説タイトル

 少し時間を遡ろう。
 今朝の六時半、飼い猫の朝食を用意するために目を覚ましたわたしは、重たい身体を起こしてカリカリを用意した。
 昨日のうちにピッタリ三〇グラムを量っておいたので、カリカリを入れていた瓶の蓋を開けて、猫専用のお皿に入れれば良いだけだ。
 そして、カリカリと音を立ててご飯を食べている猫の食事の雑音を聞きながら二度寝をしようとした。
 普段ならここですぐに眠りにつき、あと三時間ほどは目覚めなかっただろう。しかし今日は違ったのだ。

 ベッドの傍の窓。カーテンの隙間から、何かが見えた。わたしの直感が、あれは近くの森からやってきた動物ではないと告げている。
 もちろん無視して眠っても良かったのだが、生憎それほど度胸があるわけではない。眠っている間にもしも何かあれば、と考えると、どうしても横になれなかった。
 しかし、この周辺にはわたし以外に住みついている人間は居ないはずだ。いったい、誰が何の用で?

 おそるおそる窓に近づく。カリカリ。猫がご飯を食べる音を後ろに、そっと伸ばした手で一気にカーテンを開けた。
 途端に差し込む光。それから――

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